コロナ融資不良債権6%民間含め2兆円超えも!
2023.11.17
政府系金融機関が中小企業に行った新型コロナウイルス対策融資で不良債権が拡大している。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの不良債権が2022年度末に約8700億円と全体の6%になったことが会計検査院の調べで分かった。回収不能額は既に697億円に上る。民間の融資分も含めれば不良債権は2兆円を超す可能性があり、スピード優先の副作用が出ている。
検査院は7日、官庁や政府出資法人を調べた22年度決算検査報告を岸田文雄首相に提出した。検査で税金の無駄遣いを指摘したり改善を求めたりしたのは344件、総額約580億円だった。
併せて日本政策金融公庫と商工組合中央金庫によるコロナ対策融資の検査結果を示した。同貸付は国が財政援助しており、焦げ付きは国民負担になる恐れがある。検査院は債務者の状況把握を適切に実施するよう求めた。
ゼロゼロ融資はコロナ禍で需要が蒸発した中小企業の資金繰りを支えるため20年3月に公庫や商工中金など政府系金融機関で取り扱いを始めた。融資要請が殺到し同年5月から民間金融機関でも受け付けるようになった。合計の利用件数は22年9月末時点
で約245万件、実行額は約43兆円にのぼる。民間分も同様の傾向ならゼロゼロ融資全体の不良債権は単純計算で2兆円超になる可能性がある。
リスク管理債務の額は20年度末の3倍強になった。8785億円の内訳は、返済が3ヶ月以上遅延したなどの「要管理債権」が4929億円、経営・財務が非常に悪化した「危険債権」が3731億円だった。経営破綻先の「破産更生債権」などが124億円だった。
ゼロゼロ融資はコロナ禍で中小企業の資金繰りを支え、倒産や失業者の急増に伴う社会不安の抑制に効果を発揮した。半面、大手銀幹部が「非常事態でほぼ目をつむって貸していた」と話す通り、スピードを重視した結果、すでに経営が行き詰まっていた企業を延命させたり審査が甘くなったりする副作用を生んだ。金融庁によると銀行や信金など民間金融機関の融資に占める不良債権比率は22年3月末時点で1.6%民間を補完する役割の政府系金融機関の不良債権比率はおのずと高くなりがちだ。
ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産は増えている。東京商エリサーチによると20年7月から23年9月までの累計の倒産(負債額1000万円以上)件数は1077件。23年4~9月は333件で前年同期比44%増えた。23年5月から5ヶ月連続で50件を超えるなどペースは速まっている。