不動産融資7割が厳格!保有債券含み損も拡大
2023.11.16
米地銀が連鎖破後の「危機モード」から脱却できていない。金利収益の柱である商業用不動産向け貸し出しの絞り込みを迫られ、約7割の金融機関が3ヶ月前に比べて融資基準を厳格にした。3月の米シリコンバレーバンク(SVB)破綻の一因だった債券の含み損も再び膨らみ始めた。米景気の減速も影を落とす。
米連邦準備理事会(FRB)が6日発表した米金銀の融資担当者調査(SLOOS)では、地銀を含む中堅・中小行の厳しい融資態度が目立った。全体の約76%が、商業用不動産向けの融資基準を3カ月前に比べて「かなり厳しくした」あるいは「厳しくした」と回答した。「暖めた」とする回答は皆無だった。FRBの別の集計によると、9月末時点で中堅・中小行の融資残高の4割強を商業用不動産向けが占めた。大手銀行上位25行の同比率が1割強にとどまるのと対照的だ。長引いた低金利環境における不動産投資ブームで、オフィスビルやショッピングモール、集合住宅の建設・取得に関わる資金需要は急増し、商業用不動産向け融資は米地銀の成長ドライバーになった。
地銀自身の資金調達コストが上昇していることも融資基準を厳しくする一因だ。銀行は主に預金を通じて資金を調達し、融資に回している。2022年春からの急ピッチな利上げで、MMF(マネー・マーケット・ファンド)など利回り商品へ預金者が資金を移す動きが強まった。SVBが23年3月に破綻すると、経営不安が地銀全体に広がり、預金引き上げは一気に加速した。
各行とも預金金利を大幅に引き上げ、7~9月期までに預金流出には一服感も出ている。ただ、その副作用で、貸し出しや保有債券利回りの平均から預金金利などを引いた利ざやは、大半の売場地銀で4~6月に比べて縮小。主要地銀20行の中央値は3.06%と22年4~6月期以来の低水準となった。
地銀は利ざやの縮小でリスクの高い案件に融資をしづらくなる。苦境の商業用不動産は資金繰りが一段と厳しくなり、地銀は不良債権予備軍を抱えることになる。融資の絞り込みが、自らの経営リスクを高める悪循環だ。