9月の着工戸数は10年ぶりの低水準
2023.11.12
長引く資材高や人件費の高騰が住宅着工を冷やしている。9月の着工戸数はおよそ10年ぶりの低水準となった。住宅の値上がりによる消費者の購買意欲の低下などが要因だ。用地の不足や人口減少下での住宅数の過剰といった構造問題も横たわる。
国土交通省の住宅着工統計によると、1ヶ月あたりのブレを除いた3ヶ月移動平均の着工戸数(季節調整済み)は9月に6万6300戸となり、前年同期比で7.7%減少した。新型コロナウイルス禍で需要が落ち込んだ2020年6月の6万6700戸を下回った。リーマン・ショックや東日本大震災の影響が残っていた11年12月に並ぶ低い水準だ。
内訳をみると、分譲マンションや建売住宅などの「分譲住宅」が1万8700戸で13.3%減った。戸建てなどの「持ち家」は1万9100戸で8.8%のマイナスだった。持ち家の減少は21ヶ月連続となっている。「住宅展示場の来場者数はコロナ前の19年から半減している。」大手ハウスメーカーの担当者は話す。国内の住宅展示場は22年に積水ハウスが380ヵ所と19年比で11%減らした。旭化成ホームズもモデルハウスを185棟と14%減少させている。
背景にあるのが建築資材の価格や人件費の上昇だ。建築物価調査会によると、鉄筋コンクリート(RC造)の集合住宅の建築費指数(15年=100)は足元の9月に125.8となり、18年同月と比べて2割上がった。指数は木造の一軒家でも3割高まった。木材、鉄、コンクリートなどの資材の価格が上がっているためだ。人件費の上昇は建設現場で続く人手不足を反映している面がある。ただ、人手不足の影響は「これからますます大きくなる」といった声が不動産関係者からは聞かれる。建設業者に時間外労働の上限規制を適用する「2024年問題」で工期の長期化が懸念される。
住宅価格は右肩上がりで推移している。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、首都圏の新築マンション価格は23年4~9月に7,836万円と5年前に比べて2,000万円超高くなった。東京カンテイの調査では新築戸建ての平均価格は9月に4,531万円と、同じく5年前から700万円ほど上昇した。