外国人の取引把握へ
2025.10.11

国土交通省は外国人による大規模な土地購入の実態把握に乗り出した。山林なら1万平方メートル以上で、取得者の国籍を自治体に届け出るよう義務づけた。情報を国に集約するシステムを2026年度に整備する。水源や森林の保全などに向けて不適切な利用を防ぐ。
国土利用計画法は一定面積以上の取引について、契約締結後2週間以内に都道府県や政令指定都市に届け出るよう義務づけている。国民生活に悪影響が及ぶ土地の投機的な取引や地価の高騰を防ぐための仕組みで、問題があれば知事らが利用目的の変更を勧告できる。国土省は届け出の内容を定める施行規則を改正した。金額や利用目的、所有者の住所などに加えて7月1日以降は国籍の記入を必要とした。国籍情報を国が集約するためのシステム改修費を26年度予算の概算要求に盛り込んだ。全国の実態把握や動向の分析を進め、自治体と共有する。
法人による取得の場合は設立の際に準拠した法令を定めた国の記載を求める。日本法人であれば「日本」になるため、実態とずれるおそれがある。届け出の対象は大規模な土地取引に限られる。商業地域や住宅地域といった市街化区域では2千平方メートル以上、農地など市街化区域以外の都市計画区域では5千平方メートル以上、山林など都市計画区域外は1万平方メートル以上と定めている。2千平方メートルはテニスコート8面分ほどの広さだ。24年には全国で1.8万件の届け出があった。年間およそ130万件に上る土地取引の1%ほどについて国籍が分かるようになる見込みだ。これまでは届け出の住所などから推測できる程度で、確実に把握する方法がなかった。
国土利用計画法には地価高騰の影響度合いが大きな地域に限って、事前の届け出を義務づける制度もある。現状は東京都小笠原村だけだ。このほか自衛隊の基地や原子力関連の施設といった安全保障上重要な土地の周辺で外資が電波妨害などの不適切な利用をできないようにする重要土地利用規制法がある。一部の都道府県は水源地の土地取引で届け出を義務づける条例を独自に設けている。近年、外国人による土地取得が問題になるケースが相次ぐ。北海道倶知安町では中国系企業が道の許可のない森林伐採を伴う開発を進め、道が6月に工事停止を勧告した。宮崎県都城市でも森林およそ700万平方メートルを22年に中国系企業が取得したことが分かり、県が無許可の開発がないかを監視している。