【2024年】出生数最小72万人
2025.03.07

2024年に日本で生まれた子どもの数(外国人を含む出生数)は前年比5.0%減の72万988人だった。9年連続で過去最少を更新し、日本人だけに限れば70万人を割る公算が大きい。少子化に歯止めがかからず、現役世代の社会保険料負担はさらに重くなる。
厚生労働省が27日、人口動態統計を公表した。出生数は比較可能な1899年以降で最も少なかった。10年前の100.3万人(14年)と比べ、およそ3割にあたる28.2万人が減った。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が23年4月に公表した将来推計人口によると、外国人を含む出生数が72万人台となるのは2039年のはずだった。政府の想定よりも15年早く少子化が進んでいる。社人研は24年の出生数を、最も実現性が高いとされる「中位推計」で77万9千人と推計していた。最も厳しく見積もる「低位推計」では69万人で、現状はこちらに近い。24年に新型コロナウイルス禍の影響が薄れ、出生数が上向くとみていた予測も外れた。日本全体の人口減少は加速している。死亡数は1.8%増の161万8684人、出生と死亡の差である自然減も89万7696人でともに過去最多だった。自然減の減少幅は23年より6.5万人広がった。和歌山県の人口(88.4万人)に相当する数が1年で減ったことになる。
婚姻数は2.2%増の49万9999組だった。増加は2年ぶり。減少は避けられたものの、2年連続で50万組を割った。婚外子が少ない日本では、婚姻数の減少が将来の出生数に与える影響は大きい。少子高齢化が進み、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は上昇している。23年に29.1%だった高齢化率は団塊ジュニア世代が65歳以上になる40年には34.8%に達する見込みだ。現役世代の人口が少なくなれば、社会保障制度の安定は揺らぎかねない。
三菱総合研究所によると、医療や介護、年金を含めた社会保障給付費は40年度に169兆円となり、20年度比で28%増加する。なかでも現役世代が負担する保険料と公費で賄う医療給付費は48%増の63兆円、介護は71%増の19.5兆円まで膨らむ。「中位推計」を前提にした試算のため、このまま想定を上回る少子化が続くと現役世代が負担する保険料の引き上げなどは避けられなくなる。将来の年金の受取額が減る可能性もある。厚労省が24年に示した長期的な年金財政の見通しも「中位推計」の出生数をベースにしている。過去30年と同様の経済状況が続く場合、すべての人が受け取る基礎年金の将来の支給水準は現在より3割下がる。「低位推計」に近い状況のままなら、見通し以上に目減りする可能性がある。