大工不足、待遇改善急ぐ!
2025.02.17

建設市場で大工の賃金上昇や待遇改善を課題と捉える意識が強まっている。足元の住宅価格の上昇には職人の人件費増加が影響しているが、それでも大工の賃金上昇は他業種に比べて緩やかなようだ。年収の伸び悩みは大工不足につながり、住宅の施工が遅れる例も目立ってきた。ハウスメーカーも対策を急ぐ。「仕事の依頼は多く忙しいが、収入の増加は鈍い」。都内の住宅工事現場の40代の大工は話す。様々な工務店の仕事を請け負いながら、国家資格である1級建築大工技能士の資格も取得するなど腕を磨いてきたが、「対価は依然安い」という。
国土交通省によると、大工や建設機械の運転手など技能者の2024年度の公共工事設計労務単価(全国平均)は全職種ベースで2万3600円と23年度から5.9%伸びた。このうち大工の労務単価は2万7721円。全職種ベースを上回るものの上昇は4.9%にとどまり、主要12職種の中では最も伸びが小さい。物価高が住宅需要を鈍らせており、職人の収入が増えにくい構造は変わっていない。収入停滞は担い手不足にもつながる。国勢調査によると大工(15歳以上)は20年に全国で約29万8千人。1980年代のピーク比で約7割減だ。建設経済研究所(東京・港)は35年には15万人まで落ち込むと予想する。国民生活センターに入った相談では、首都圏に住む30代男性が23年に新築注文住宅を契約したが、施工の人手不足で引き渡しが当初予定より10ヵ月ほど遅れたという。
国交省によると、24年1月~11月の新設木造住宅着工数は41万4820戸と前年同期比0.9%減とほぼ横ばい。停滞の背景は、在宅勤務拡大に伴う住宅需要増の一巡や物価高などが大きいが、大工不足も無視できないようだ。大工の技術が特に必要な「在来軸組」の着工数が2.6%減り、全体を押し下げている。全国に提携工務店を持つ大手ハウスメーカーでは「短い工期の仕事を引き受けにくくなった」(幹部)。大手各社はこれまでも工場で木材を事前加工する「プレカット」による現場作業の軽減や工期短縮などを進めてきたが、足元は対策の幅を広げる時期にきている。