修繕積立金の運用増加!
2025.02.09

マンション管理組合が物価上昇を受け、住民から集めた修繕積立金の資産運用に動き出している。住宅金融支援機構が管理組合向けに発行する運用商品「マンションすまい・る債」の2024年度の応募数は前年度比で3割増となった。管理組合向けの運用商品を開発する金融機関も現れ始めている。同債券は政府が金額出資する住宅金融支援機構がマンション管理組合の修繕積立金の運用向けに販売している。24年10月に募集を締め切った24年度の応募数は3592組合で、直近2年で1.95倍に膨らんだ。利回りは市中金利の動向などを踏まえて決めている。日銀が25年1月24日に追加利上げを決めたことで、25年度に募集する際には利回りは高くなる公算が大きい。応募増の背景にあるのは建築資材や人件費が高騰し、以前に見積もった修繕費用に基づく積立金では足りなくなる問題だ。国土交通省の23年度の調査では、積立額が計画に比べて不足していると回答した管理組合は4割近くに上った。不動産関係者は「運用に関心のない管理組合も多かったが、必要性を認識する組合が増え始めている」と話す。
すまい・る債の24年度発行分の利回りは0.5%(管理計画認定を受けた場合は0.55%)で、資材価格や人件費の上昇率には遠く及ばない。神奈川県のマンション組合の理事の男性は「大規模修繕の不足分を補えない」と頭を悩ませる。運用ニーズが高まる中で新たな関連商品も登場している。融資型クラウドファンディング(CF)を手掛けるFunds(ファンズ、東京・渋谷)は24年12月、組合向け運用商品を開発した。融資型CFは、投資家から集めた資金を企業に融資し、収益の一部を投資家に分配する金融商品だ。予定利回りは年1~3%程度と、すまい・る債を超える。元本割れのリスクを極力減らすため、融資対象は、ファンズで一度も貸し倒れしたことのない上場企業などに絞っている。満期は1~3年と短く、大規模修繕のタイミングに対応しやすい。融資先は組合の方針に沿ってファンズ側が候補を選定し、組合側に提案する。管理組合を支援する動きは大手金融機関でも出始めている。三菱UFJ信託銀行は金融機関として初めて管理組合の理事会業務を代行する事業に25年度に参入する予定だ。積立金の運用でも、信託銀行としての専門性を生かせる可能性がある。
管理組合は区分所有者から集めた積立金を目減りさせないことを重視しており、相対的にリスクの大きい投資信託などには手を出しづらい。修繕前に運用をやめて現金にしなければならない点も、継続的な運用の難しさにつながっている。金融に詳しい人が組合の理事などにいるケースでもリスクの高い運用を巡り区分所有者の合意を得るのは容易ではない。国内のマンション管理組合の積立金は2兆円規模とされる。すまい・る債を購入する組合は足元で増えているが国交省の23年度の調査(複数回答可)によると全体の19%という状況だ。銀行の定期預金で運用しているのは35%で、普通預金や決済性預金に資金を預けているだけの組合も多い。積立金を安定運用する動きを活発化させるためには、専門的な知見を持つ金融機関のサポートや商品開発も重要になる。「金利のある世界」が本格的に到来するなかで、修繕金の運用の重要性はより一層高くなってきている。