不動産投資ローン残高最高!
2025.02.08

銀行の個人向け投資用不動産ローンが伸びている。従来の相続対策目的での利用に加え、転売益を狙って分譲マンションを購入する個人が増える。2024年9月末時点のローン残高は28兆3千億円と統計が遡れる09年以降で過去最高を更新した。個人向け住宅ローンの競争が激しさを増す中、銀行が不動産投資ローンの強化に動いている。
不動産投資ローンは住宅ローンと異なり、個人が所有する不動産に賃貸用のアパートを建築したり、新築や中古のマンションを投資用に購入したりする際に借りる。日銀統計によると、銀行が「個人による貸家業」に設備資金を新規に貸し出した金額は24年4~9月期に1兆7千億円に達した。前年同期に比べて22%増え、半期ベースでは17年10月~18年3月期以来、約6年ぶりの貸出額の多さだ。16年のマイナス金利の導入以降に、金利の低さが人気を呼び、16年10月~17年3月期の銀行の新規貸出額は2兆円を超えた。18年にスルガ銀行による不適切融資が問題視されて以来は下火になり、一時は半期ベースの新規貸出額が1兆円台前半に落ち込んでいたが、23年以降、復調傾向が顕著になっている。賃貸用の不動産は相続時の節税効果が見込めるため、これまでは不動産を保有する富裕層の利用が多かった。ここに来て資産形成目的でローンを借りる事例が目立つ。新規融資の増加で、ローン残高も24年6月末に28兆2千億円と約4年ぶりに過去最高を更新し、9月末にはさらに1千億円残高が伸びた。
銀行にとって投資用不動産ローンは一般の住宅ローンより高い利ざやが見込める。日銀は24年3月から計3度の利上げに踏み切ったが、住宅ローンの変動型の最優遇金利は大半の銀行でまだ1%以下で、利ざやは大きくない。一方、不動産投資ローンの金利は2%前後で融資額も大きい。取引を通じて裕福層との関係も深め別の金融取引につなげられる利点がある。ネット銀行の新規参入も相次ぎ、投資用不動産ローンを取り扱う銀行が増えている。個人がローンを借りやすくなったことがマンション価格高騰の一因になった側面もある。
ワンノブアカインド(東京・港)のデータを基にした日本経済新聞の調査では、24年1~10月に東京・大阪で築1年以内に売りに出された物件数は10年前の3倍を超えており、転売益を見込んだ投資家の短期の売買が急増している。不動産投資の活況を背景に、銀行側も融資に前向きになっている。大和ネクスト銀行が24年10月に、東京きらぼしフィナンシャルグループ傘下のUI銀行は24年12月に参入した。住宅ローンの新規融資額で上位の住信SBIネット銀行も23年から東京23区など大都市圏を対象に不動産投資用ローンの提供を始めている。3行はいずれもネット銀行だ。大和ネクスト銀行は3億円以上に融資の対象を絞り、富裕層向けの取引拡大を目指す。ネット銀各行は独自性を打ち出し、これまで中心的な担い手だった地方銀行からシェアを奪いたい考えだ。
これまでは融資の際の担保となるマンション価格の上昇トレンドが続いてきたため、仮に借り手が返済に生き詰まっても、銀行がローンを回収できなくなるリスクは抑えられていた。日銀の利上げがこの先続けば不動産への購入意欲が減退し価格が下落サイクルに入れば焦げ付きが増える恐れはある。金利競争が過熱し、収益性が低下する事態を懸念する銀行も出てきており、あるネット銀の幹部は「徐々に貸出実行額を下げている」と話す。今後は融資を強化する銀行と距離を置く銀行に二極化が進む可能性がある。