【首都圏8月】マンション発売50%減
2024.09.23
不動産経済研究所(東京・新宿)が19日発表した8月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンションの発売戸数は前年同月比50%減の728戸だった。減少は5ヶ月連続で8月としては過去最低だ。建築コストが上がる中、採算が見込めるホテルなどが用地取得を優位に進めており、マンション供給は低水準が続く。8月の供給は1973年の統計開始以来、最低だ。供給減少に歯止めがかからない。
2023年の首都圏のマンション供給戸数は前年比9%減の2万6873戸。バブル崩壊直後以来の低水準でピーク時から7割減った。24年に入って減少は加速しており1~8月の供給は前年同期比22%減となった。供給数の減少は販売価格の上昇を招く。8月の東京23区の平均販売価格は前年比62%増の1億3948万円と、4カ月連続での1億円超えだ。神奈川(5995万円)なども上昇。1~8月の首都圏の平均価格は7819万円となった。供給減の背景には、人手不足に伴う建設の遅れに加え国内外の投資マネーがインバウンド需要に沸くホテルに向かう中、開発用地の争奪戦でマンション勢が苦戦を強いられていることがある。インバウンドの増加を受け、特に浅草や上野などの観光地に近い場所ではホテルの開発事業者による用地取得が増え、買い負ける例が増えている。
不動産サービスのジョーンズラングラサール(JLL)によると、24年1~6月の国内不動産投資でホテルが占める比率は16%と、23年までの過去10年間の平均(9%)を大きく超えた。分野別でもオフィスに次ぐ規模で住宅や物流を上回る。社宅跡地などマンションに適した土地が減ったことも逆風だ。人手不足や資材価格の上昇も響いた。「10年前、3LDKの建設コストは1戸2000万円だったが、今は3000万円はかかる」とあるデベロッパーの幹部は明かす。価格が低い郊外では採算が取れないとして、分譲マンションの計画自体が減っている。 都内でも、単価が低い小型の部屋など、採算を取りにくい分野も増えている。大手は高単価で好立地の物件に注力する。三菱地所は駐日英国大使館跡地(東京・千代田)で超高級マンションの開発に取り組む。急激な価格上昇でマンション購入を諦める動きが広がる兆しもある。不動産情報サイトを手がけるLIFULLによると、首都圏のファミリータイプの賃貸需要が増えており、賃料は8月時点で12万7814円と、前年同月から9%上昇した。