不動産の相続、税負担も!
2024.09.19
一般的な相続で引き継ぐことが多い資産の1つが不動産だ。その相続税負担が増す可能性が高まっている。大きな理由は、2024年1月にマンションの相続税評価額の算出ルールが改定されたことにある。それに加えて、評価額の算出に使われる土地の価格の指標が年々上昇傾向にあることも、相続税の押し上げ要因になっている。
東京都内の税理士事務所に、昨年まで相続財産の見込み額が約3億円だったという80代の男性。男性は約3000万円の納税額を想定し、財産を引き継ぐ家族が現金で支払えるよう用意していた。だが、今年1月に導入された新たなマンションの相続税評価額の算出ルールに基づいて保有マンションの評価額を計算し直したところ、財産全体の評価額が4億円近くに膨らんだ。その結果、相続税額は約7000万円に増える見込みだ。想定金額の2倍越となり、新たに資金対策を講じる必要がでてきた。
なぜマンションの相続税評価額の算出ルールが変わったのか。マンションが戸建てに比べて、市場価格と相続税評価額の差が大きくなりやすかったのを見直す狙いが背景にある。これまでは、マンションを高値で購入しても、相続では低く評価されやすいことから相続税の節税につながるとして富裕層を中心に人気を集めてきた。マンションの評価額は、路線価に敷地全体の面積と敷地利用権の割合をかけ、建物の固定資産評価額と合計して算出する。戸数が多い大規模マンションは一戸あたりの土地持ち分が狭く評価額が低くなりやすい。一方、市場価格は建物の階数や築年数が反映され、高層階の物件などは高くなりやすい。国税庁の調査では、マンションの相続税評価額は平均で市場価格の4割程度で、戸建ての6割程度と比べて低かった。新ルールでは、評価額を最低でも市場価格の6割程度に引き上げた。具体的には、築年数や階数などに様々な係数をかけ、相続税評価額と倫理的な市場価格の「乖離(かいり)率」を計算する。その結果、評価額が市場価格の60~100%なら従来通りの評価額とする。60%未満(乖離率は1.67倍超)なら、乖離率に0.6をかけた値を従来の評価額にかけて、評価額が市場価格の60%になるように補正する。新たなルールで時価との差額が是正されると、マンション価格が高い都心部を中心に幅広い物件に影響が及ぶ可能性がある。低層物件にも影響がある。専有面積に対する敷地利用権の割合は高層マンションより高いものの、乖離率は2倍超。マンションを保有する人に幅広く影響がでる。