薄れる新築志向
2024.08.18
2024年度の年次経済財政報告(経済財政白書)の副題は「熱量あふれる新たな経済ステージへ」だった。白書は中古マンションに人気が出ていることを取り上げた。内閣府が住宅金融支援機構のフラット35利用者調査などから推計したところ、中古住宅を購入した割合は22年度に27.1%となった。12年度の13.5%から増加した。
住居の種類別でみると、例えば年収1000万円以上の層では12年は中古マンションを選んだ割合が1割だったのが、22年度には2割弱まで高まった。一方で新築のマンションの割合は12年度の3割から2割に低下した。年収が600万~1000万円の層でも中古は人気だ。年齢別では、30代以上で新築がよいとする割合は半分を下回った。中古マンションの資産価値が見直されていることが新たな「熱」を生んでいる。
東京圏のマンションで、実際の新築物件と中古物件の価格低下幅から推計した新築時の価格を比較すると、13年度は実際の新築の方が1平方メートルあたり3万円程度高かったのに対し、22年度は逆に6万円程度安かった。新築には新品であることや、間取りや内装を選べることから「新築プレミアム」と呼ぶ特有の価値があるとされる。白書は新築プレミアムが消失していると分析した。中古流通の活性化を受け、国も流通を後押しする制度の整備や、ストックをより長期で使えるような管理強化の支援に動く。分譲マンションでは22年4月から地方自治体が一定の基準を満たせば管理が適正であると認定できる「管理計画認定制度」を始めた。認定を受ければ修繕積立金を運用する利率が優遇される。白書は欧米に比べ中古住宅の取引の透明性が低いと指摘した。「少子高齢化と人口減少が進む中にあっては過剰供給につながる新築信仰から脱却し、既存住宅を有効活用することが重要」と結んだ。