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不動産、デジタル証券に

2024.07.26

不動産をデジタル証券として小口化し、投資家に販売する取り組みが拡大している。三井物産子会社は証券化を目的に年度内にも大型のリゾートホテルを取得する。不動産運用のケネディクスは戸建て住宅を証券化した。投資マネーの流入で市場規模は過去3年で約40倍に膨らんでいる。

不動産のデジタル証券はブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って不動産の所有権を小口化し、セキュリティートークン(ST)として投資家に販売する仕組み。2020年の改正金融商品取引法で金融商品として認められて以来、オフィスビルやホテルなどのSTが発行されている。不動産への投資としては不動産投資信託(REIT)が普及している。金融商品として市場で売買されるREITは値動きが大きい。一方、不動産STの価格は不動産の鑑定評価額に基づいて算出するため、値動きが小さく安定しているという特徴がある。三井物産子会社の三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)は、STを発行して資金を調達するセキュリティー・トークン・オファリング(STO)と呼ばれる手法で、年度内にも沖縄のリゾートホテルを購入予定だ。取得金額は数百億円~1000億円規模になるもようだ。MDMはこれまで、インバウンド(訪日外国人)向けのホテルや賃貸住宅など、数十億~100億円規模の物件のSTを販売していた。投資家の需要が旺盛なため、リゾートホテルのような大規模物件の証券化が可能だと判断した。足元で発行しているSTは650億円程度となり、5年以内に3000億円規模を目指す。

ケネディクスはSMBC信託銀行や野村証券などと共同で、首都圏の戸建て住宅約500戸をまとめたSTを発行した。不動産におけるSTは物件ごとに発行する形が多いが、REITのように複数の戸建て住宅を束ねて運用する。ケネディクスの不動産ST発行額は国内シェア5割に達する。温泉旅館や物流施設などのSTも発行してきた。幅広い物件を取り扱って選択肢を増やし、様々な投資家を呼び込む戦略だ。ケネディクスによると、6月末時点で国内不動産STの発行額は1225億円と、23年末から76%増、21年末から約40倍に伸びた。1口あたりの投資額は10万~100万円程度で、分配金の利回りは3~5%が多い。30年までに市場全体で2.5兆円の不動産がST化されると推測する。定着に向けた課題も残る。SBIグループや三井住友フィナンシャルグループ(FG)が出資する大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)は23年、同社の施設取引システム(PTS)で不動産STの売買を開始したが、対象は一部に限られており、流動性は低い。普及に向け、市場の整備は欠かせない。

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