中国が開発制限、住宅在庫圧縮へ
2024.06.10
中国政府は住宅在庫の圧縮に乗り出す。完成から引き渡しまでの期間が3年を上回る地域で、地方政府が不動産会社に国有地使用権を売るのを禁じる。事実上の開発制限で、対象は主要都市の4割に及ぶ。過剰在庫による値崩れを防ぐ狙いだが、地方財政の悪化を招く。
政府は5月、地方政府に在庫住宅の買い取りを指示した。中国人民銀行(中央銀行)の金融支援をテコに5000億元(約10兆8000億円)分の買い取りをめざす。2年半に及ぶ不動産不況で積み上がった在庫の圧縮には物足りない。中国の証券会社、天風証券は「全国で在庫を適正水準まで減らすには7兆元かかる」とはじく。政府は買い取りのほか開発規制で在庫削減を進める。
中国は土地の国有制を敷く。地方政府が入札を通じて土地の使用権を売り、不動産会社がマンションを開発してきた。新たな規制策はこの使用権売買を制限し開発を抑制させる。土地の利用策を所管する中国自然資源省がまとめた。在庫消化期間が3年以上の都市で使用権の売却を一時禁止する。3年未満になれば使用権の売却を再開できる。同期間が2年以上3年未満なら、物件を引渡して在庫が減った分だけ使用権の売却を認める。マンション開発の起点である使用権の売買を制限して、新たな建設を抑制し在庫の消化を優先させる狙いだ。
中国国家統計局によると4月末時点の在庫面積は1年前から24%増えた。供給過剰で価格は下がる。4月の主要70都市の新築価格を単純平均すると前月より0.6%低かった。下落率は14年11月以来およそ9年半ぶりの大きさとなった。値崩れが続くと不動産会社の資金回収は遅れ、経営不安が高まる。金融市場で債務不履行(デフォルト)懸念が強まり、銀行は不良債権処理に苦しむ。地方政府による在庫買い取りに加えて開発制限にも踏み込んで不動産問題の解消を急ぐ。とはいえ事実上の開発制限は地方財政を直撃する。地方政府にとって土地使用権の売却収入は税収に並ぶ貴重な財源だからだ。
中国メディアの財新によると、3月時点で主要100都市のうち4割超で在庫消化期間が3年を超えた。22年末は2割弱、23年末は3割で、3年を上回る都市の割合は毎年上昇する。現在のペースで換算すると住宅在庫の販売消化に10年以上かかる都市があるという。これまで2年超にわたる不動産市場の低迷で、23年の売却収入はピークの21年から33%減った。新たな規制を厳格に適用すれば、24年の収入は一段と減少する可能性が高い。
新たな不動産開発を抑制して在庫の圧縮を進めるとしても、肝心の販売は回復の兆しすら見えない。景気停滞に伴う先行き不安に加え「住宅は値下がりする」との予想が増えてマンション購入を様子見する人が増える。