【新築マンション】東京・大阪世界首位!
2024.06.07
東京・大阪4月時点の新築マンション価格の上昇率が世界主要15都市で首位となった。資材費・人件費などの価格上昇が転嫁されていることに加え、円安などを背景とした割安さに目をつけた海外マネーが価格水準を押し上げた。株価が歴史的な高値圏にある日本の富裕層の購入も進んでいる。
不動産サービスの日本不動産研究所(東京・港)が30日発表した国際不動産価格賃料指数の4月調査によると、東京と大阪の新築マンション価格の前回調査(2023年10月)に対する上昇率はともに1.5%だった。シンガポール(1.3%)やニューヨーク(0.3%)の上昇率を上回り、世界首位だった。東阪がそろっての首位は10年の調査開始以来初めてで、日本の上昇が際立つ。
新築マンションが高騰している理由は大きく3つある。まず、原価の上昇だ。土地の仕入れ価格や生コンクリートなど資材価格に加え、工賃などの人件費も上昇。「足元のマンションの建設コストは2~3割上昇しており、これが価格に乗っかっている(不動産デベロッパー幹部)」という。品薄も価格上昇に拍車をかける。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、23年の東京23区の新築マンション供給戸数は1万1909戸で、10年前の4割の水準だ。
マンション各社は住宅面積を小さくして価格上昇を抑えようとしている。住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」の利用者調査では22年度の住宅平均面積は新築マンションが65.7平方メートルと10年前に比べ8%縮小した。一方、70~80平方メートルのマンションにはファミリー層の需要が強く価格に上昇圧力がかかる。3つめの理由が海外マネーの流入だ。不動産サービス大手の米ジョーンズラングラサール(JLL)によると、海外投資家による不動産の購入額を表す「インバウンド投資額」は24年1~3月期に1773億円と23年10~12月期の451億円から大幅に増えた。機関投資家が主体だが、個人投資も似た傾向を示す。
価格上昇率が大きいのは世界の主要都市と比べて日本のマンション価格が安いことの裏返しでもある。4月調査では東京の港区元麻布にある分譲マンション一室の一坪(3.3平方メートル)あたりの単価を100とした場合(円換算ベース)、大阪は68.2。世界主要15都市の中で最も高い香港(268.2)やロンドン(207.5)に比べ、半分以下だった。相対的に安い価格水準にあることから東京、大阪とも上昇余地を残しているとの見方は根強い。ただ価格上昇が続けば購入ハードルも高くなってくる。ニッセイ基礎研究所(東京・千代田)などの調査によると、23年の東京23区新築マンション価格(中央値、約8389万円)の平均世帯年収(東京都、約864万円)に対する倍率は9.7倍だった。7.3倍だった13年と比べて年収倍率は拡大した。同研究所の佐久間誠主任研究員は「平均的な家計にはかなり買いにくい水準だ。高すぎて買えない層が賃貸住宅に流れ、賃貸市況の底堅さにつながっている」とみる。今後は金利上昇の影響も出てきそうだ。30日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時、1.1%と約13年ぶりの高水準を付けたことで、住宅ローンの固定金利は先高観が強まる。東京カンテイ(東京・品川)の井出武上席主任研究員は「住宅ローン金利が今後どれほど上がるか見通しが立ちにくくなった。新たにローンを組む人はためらう可能性があり、購入意欲が落ちかねない」と指摘する。