ニュース NEWS

ホームニュース中国金融緩和頼み

中国金融緩和頼み

2024.02.24

中国人民銀行(中央銀行)は20日、住宅ローン金利の目安となる事実上の政策金利を0.25%引き下げた。5日に1兆元(約21兆円)の長期資金を市場に放出したことに続く緩和策となる。中国政府は不動産市場の低迷で地方財政が遍迫し打つ手が狭まる。金融政策を通じて住宅販売のてこ入れを急ぐ。

人民銀行は最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を事実上の政策金利と位置づける。今回、住宅ローン金利の下限を5年超のLPRを従来の年4.2%から年3.95%に下げた。これを受けて20日の中国・上海株式相場は続伸した。18日に人民銀行傘下の専門誌が「利下げの可能性がある」と伝えており、金融市場は利下げを織り込んでいた。それでも0.25%という過去最大の下げ幅は市場予想を上回り、政策への期待が株価を押し上げた。人民銀行は5日に市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を引き下げた。銀行の貸し出し余力を高めて融資拡大を促した。預金準備率とLPRを同じ月に下げるのは21年12月以来となる。

立て続けに緩和策を打ち出したのは、マンション市場の不振に終わりがみえないためだ。シンクタンクの中国指数研究院によると、主要都市での1月の新築販売面積は前年同月比13%減少した。2月中旬の春節(旧正月)休暇も23年の休暇より27%少なかった。経済が発展し人口が流入しやすい大都市は販売に持ち直しの兆しもみられる。対照的に販売面積の8~9割を占める省都級やそれ以下の中小都市は落ち込みが続く。人口流出で需要がしぼむ中小都市ほどマンション在庫がだぶついている。地方財政が一段と厳しくなり、景気対策として金融政策に頼らざるを得ない面もある。地方政府が依存する国有地使用権の売却収入はピークの21年から2年間で33%落ち込んだ。

不動産市場を中心に景気持ち直しの兆しが見えてこなければ、足元で伸びる株価の戻りも鈍る可能性がある。その場合、人民銀行は一層の利下げを迫られるが、銀行の経営体力をそぐリスクにもなりうる。人民銀行はLPRのうち期間5年超の金利は下げたが、同1年物は年3.45%で据え置いた。これまでの利下げで貸出金利も下がり、銀行の利ざやを圧迫してきた。銀行の利ざやはすでに過去最低で、銀行の業界団体、市場金利設定自主機構が経営の健全性を図るうえで定めた警戒ラインも下回る。不良債権処理に備える銀行の収益力を考慮し、追加利下げを期間5年超の金利に限定した可能性がある。

人民元安も大幅な利下げを打ち出しにくい一因とみられる。元安が止まらないと資金流出を招く恐れがあるためだ。景気停滞でデフレ懸念もちらつく。インフレ率を加味した実質の政策金利をみると、物価上昇が鈍った23年春から高止まりしている。インフレ退治のため利上げを急いだ米欧より高い。

実質金利が高いと、企業や家計の借り入れ負担が増す。人民銀行が融資を促すため利下げや資金供給の拡大など緩和策を打ち出しても、マネーは銀行に滞留しがちになる。金融政策も小出しの対応に終始すると景気回復の道は険しさを増す。

フォームでのお問い合わせ

page top