住宅ローン獲得!ネット銀対面重視
2024.02.23
住信SBIネット銀行は同行の看板を店舗に掲げる銀行代理業者の拠点を今の5倍の200店に増やす。代理店に営業を委託すればコスト増となるが、顧客の取り込みを優先する。大手行はネット銀行が得意としてきたデジタルサービスを充実し、金利面での差も小さくなりつつある。住宅ローンは相談などのサービスを競う段階に入った。
住信SBIネット銀行はコスト負担の重い直営の店舗は作らない代わりに、住宅ローンなどを提供する銀行代理業者との提携を増やす。店に住信SBIの看板を掲げている代理店は2023年12月時点で40店舗ある。こうした店舗の住宅ローンの実行額は23年4~12月で2866億円と、全体の2割強を占める。看板を掲げる店舗は中期的に200店まで増やす。
住信SBIネット銀行は福岡県や兵庫県など首都圏以外にも拠点を持つGOESWELL(東京・新宿)などと代理店契約を結び、手薄だった地方の相談拠点を拡充した。3月には銀行機能を他社に提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)で提携する北海道日本ハムファイターズの球場運営会社と協力し、球場に住宅ローン相談スペースを設ける。
業界最低水準の金利で住宅ローン実行額を急速に増やしているauじぶん銀行も実店舗の拠点を強化する。19年以降で、相談拠点を持つ代理業者5社と提携した。グループのKDDIの携帯ショップ10店でも住宅ローンを提供している。代理店手数料を支払う分、ネット銀の実入りは減る。利益を削ってでも、対面相談の需要が根強い地方などで新たな顧客を開拓するメリットが大きいとみる。
ソニー銀行はソニー生命保険で個人営業を担うライフプランナーが保険とあわせて住宅ローンの相談に乗る。ソニー銀では全体の4分の1程度がライフプランナー経由だという。住宅ローンは低金利を武器とするネット銀行と実店舗を拠点に営業活動する既存の銀行が争う構図だった。地方では地銀の存在感が大きい。勢力を拡大してきたのが低金利を武器とするネット銀行だ。住信SBIの年間実行額は1兆4000億円超とメガバンクを抜いて最大手となった。
ネット銀行が拠点の拡充や対面営業を強化するのは、住宅購入時に住宅ローンを紹介する不動産業者やハウスメーカーに対する営業を強化する狙いもある。メガバンクは巻き返しに動いている。三井住友銀行は個人の銀行手続きをスマートフォンで済ませられるようにした一方、既存の店舗は相談特化型を増やしている。店舗の6割を商業施設内などに出店する「ストア」と呼ぶ新型店舗に転換する。平日夕方や休日も機能を絞って開店して顧客を集める。
住宅ローンは金利面での差別化が難しくなり、対面による相談の充実などサービスが問われるようになる。一方で首都圏のデジタル世代が主力顧客のネット銀が地方で営業を強化すれば、低金利競争が地銀まで波及する可能性がある。