輸入木材、在庫半減!
2024.02.09
住宅の柱や梁(はり)などに使う輸入木材の在庫が減っている。東京地区の輸入木材在庫は直近ピークの2022年8月に比べて半減した。新型コロナウイルスの感染拡大時に増えた在庫の圧縮が進んだ。水準はコロナ前を大きく下回るが、不足感はなく、住宅需要の鈍さを映す。
東京木材埠頭(東京・江東)のデータを基に日本木材輸入協会(同)がまとめた東京地区の輸入木材在庫(北米材、欧州材、ロシア材のうち針葉樹、集成材含む)は、1月末時点で約7万9154立方メートル。前年同月末より37%少なく、直近で最も多かった22年8月末と比べ53%減った。背景には住宅向け需要の低迷がある。日本で流通する住宅用木材のうち、梁をはじめとする横架材の9割、柱の5割が輸入品だ。需給バランスを取るために輸入商社が調達を控えた。農林水産省によると、23年の製材品輸入量は333万4030立方メートルと、前年を32%下回った。
キッチン、トイレなどの設備代や、人件費など建築に関わるコストの増加で住宅の販売価格があがり、買い控える消費者が多い。国土交通省がまとめた23年12月の木造住宅新築着工数は3万5730戸と前年同月比4%少なく、マイナスが21ヶ月続く。
東京の輸入木材在庫はコロナ禍が起きるまで常時12万立方メートル程度で安定していた。「国内の需給はこの水準でバランスしている」(木材流通会社の担当者)というのが流通市場の認識だった。在庫量の変動が大きくなったきっかけはコロナの感染拡大だ。海上物流が不安定となり入荷予定が見えづらくなった。さらに米国で巣ごもり中のリフォーム需要が急拡大したのを発端とした「ウッドショック」で世界的に木材価格が高騰した。日本でも住み替えやリフォーム需要が高まり、木材の不足感が強まった。
流通価格はすでに下落している。東京地区で木材問屋が工務店などに販売する価格は、梁に使う米松材(4m10.5㎝角)が21年夏から22年夏まで1立方メートル12万円だったが、23年後半には8万円台まで下がっている。
1月末時点の埠頭の在庫量は、コロナ前の19年を3割下回る。「コロナ前なら考えられない少なさだが、適度で心地よい水準」と木材流通会社の担当者は表現する。4月以降は建築に関わる技術者の就労時間が制限される。「駅前再開発や大規模施設の建設に職人が流れ、家を建てる担い手は不足する」との見方がある。大手木材流通会社の担当者は「低い在庫水準はマーケットの縮小を示す。商社や流通など各段階で再編が進む可能性がある」と指摘する。