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米、住宅購入の壁高く

2024.02.05

米国で住宅購入のハードルがかつてないほど上がっている。高金利と物件不足の影響で一般的な物件購入に必要とされる年収が初めて10万ドル(約1500万円)を突破。家賃も高騰し、ホームレス増加の一因とも指摘される。アメリカンドリームである住宅購入の難しさは社会問題となり、大統領選挙の焦点にも発展しうる状況だ。

全米不動産協会(NAR)の試算によると、全米で中央価格の物件を買うために必要な最低限の年収は23年11月時点で約10万5000ドル。全米の年収(中央値)の9万9000ドルを上回る。

購入時に求められる信用力も高まっている。クレジットカードの返済履歴や借入残高などから信用力を数値化したクレジットスコアは住宅ローンを組む際に欠かせない。インターコンチネンタル取引所(ICE)によると、足元の住宅ローン保有者の平均スコアは10年前と比べ2%高い。住宅購入が高嶺の花なのは、米連邦準備理事会(FRB)の利上げによって住宅ローン金利が上昇したことに加え、住宅在庫の払底に伴い価格が高騰しているためだ。

30年物固定住宅ローン金利(1月25~31日集計)は週平均で6.63%と、利上げ前の21年の2.7%前後と比べ2倍以上高い。さらに、過去の低金利下で組んだローンを手放してまで住宅を売却したい人は少なく、供給不足を招いている。23年11月時点の中古一戸建ての価格(中央値)は39万2100ドルと、20年1月と比べ5割上昇した。

住宅を購入できない人は賃貸物件に流れ、家賃の高騰につながっている。ムーディーズの調査では、収入に占める家賃の平均割合は22年に初めて30%を超えた。特にニューヨーク(64%)やマイアミ(42%)ロサンゼルス(34%)など都市部は家賃負担が重い。あおりを受けるのは低所得者だ。在宅勤務の普及などで家賃が低かった地域に中・高所得者層が住むようになり、価格が底上げされた。

政治の関心も高まる。「(高金利によって)住宅市場は投資家優位となり、労働・中産階級が次世代に向け富を蓄えるすべを閉ざしている。」米連邦議会上院の銀行・住宅・都市問題委員会は1月30日、パウエルFRB議長に早期の利下げを求める書簡を公表した。「住宅価格や家賃への対策は政治的にも投票者の賛同を得やすい項目だ。今年の大統領選に向け、民主・共和両党で意識されている」とムーディーズのチェン氏はみる。

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