【中国】政策金利2ヶ月連続据え置き
2023.10.22
「北京=川手伊織」中国人民銀行(中央銀行)は20日、事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を据え置いた。追加利下げは見送る一方、銀行がすでに貸し出した住宅ローンの金利引き下げを誘導する。家計の金利負担を軽減し、消費の喚起を狙う。
優良企業に適用する貸出金利の参考となる期間1年のLPRは年3.45%で、2ヶ月連続で据え置いた。住宅ローン金利の目安になる同5年超の金利は年4.20%とし、7月から据え置きが続く。中国経済が底打ちしつつあり、これまでの金融緩和の効果を見極める姿勢とみられる。人民銀行は利下げのほか、不動産規制の緩和など需要刺激策を打ってきた。例えば、購入時に用意する頭金の比率や住み替え用に借りる住宅ローンの金利を引き下げた。消費活性化のため、すでに貸し出したローン金利についても引き下げるよう銀行に促した。
大手銀行は人民銀行などの方針に基づき、9月25日から引き下げに応じた。対象は1件目のローンだ。人民銀行によると、すでに貸し出したローンの平均金利は9月末時点で4.29%となり、1ヶ月で0.42%下がった。中国の住宅ローン金利はLPRと連動する変動金利が多いとされる。金利の見直しは年1回のため、人民銀行が利下げに踏み切っても既存のローン金利が下がるまで一定の時間差がある。このため、昨年末ころから過度な金利負担を抑えようと、預金や投資資金を元手にローンを前倒しで返済しようとする動きが増えた。前倒し返済が急増すると、銀行の金利収入が大きく落ち込みかねない。人民銀行などが既存のローン金利を一斉に引き下げるよう誘導した背景には、前倒し返済を迎えるという銀行経営への配慮もある。
住宅ローンが大半を占める9月の家計向け中長期資金の新規融資(返済分を差し引いた純増額)は前年同月から6割増えた。頭金比率が下がった大都市で新規融資が増えたほか、既存のローン金利の低下をうけて前倒し返済も減ったとみられる。
大手銀行などは利ざやを確保するため預金金利も下げた。野村国際は既存ローンの金利引き下げで借り手の返済負担は年2000億~3000億元(約4兆~6兆円)軽くなるとはじく。一方で預金金利が0.15%下がると預金者の利子収入が年1970億元減る。全体でみると返済負担減の大半が相殺されると分析する。