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小学校の空は100億円!?

2024.09.21

東京都渋谷区が計画する区立小学校の再整備事業費が、学校上空の空中権の移転でまかなわれる。最大で約100億円という価値もつけられている空中権は再整備事業で一緒に建て替える向かいのマンションに移転される。移転取引に金銭授受はなく、マンションの開発事業者が小学校設備も担い、対価を補償する。

渋谷センター街の北側にある区立神南小学校は、築60年が経過する。渋谷区は2029年に新校舎を竣工する計画で、区道を挟んだ築49年の14階建てマンション「渋谷ホームズ」とともに一体的に再開発する。再開発に伴い、区は神南小学校の空中権をホームズ側に移転する。空中権は法的に定められたものではなく、民間の不動産取引で生まれた概念で、容積率を指す。都市計画法に基づく「容積適正配分型地区計画」という仕組みを使う。計画では小学校の容積率500%のうち91%をホームズの容積率は500%。再開発による土地の条件変更に伴う緩和措置もあわせ最終的に1000%に拡張される。14階建てのホームズは、容積率が大きくなったことで高さ約140メートル33階建てに建て替えられる見通しだ。

23年6月時点の調査に基づいて作成された不動産鑑定評価書では神南小学校の宅地評価は約7700平方メートルで563億円。一方で容積率を移転した場合の不動産調査報告書は462億円となっていた。差額の101億円が小学校から移転される容積率の価値になる。1%あたり約1億円だ。周辺にある中古マンションなど不動産の取引事例や、賃貸にした場合に得られる収益などをベースに評価されている。一方、渋谷区は17日に「鑑定額は容積配分について約52億円」と区議会に示した。「客観的な評価を得るため、複数事業者で鑑定した」(まちづくり第三課)という。容積率を得る渋谷ホームズ側は、高層マンションへの建て替え計画を区分所有者らによる準備組合で進めており、大手デベロッパーが協力事業者として参画する。通常ならば、ホームズ側から容積率の代金が支払われるはずだが、今回は金銭授受が発生しない。対価として小学校の整備をホームズ側のデベロッパーが担う形で補償する。小学校の建て替え費用の全額をまかなえるわけではないものの、区の担当者は「費用を抑えられる」と説明する。ホームズは高層にして増設した住戸を新規に分譲することで収益を得られる。立地を考慮すると、かなりの高額物件になりそうだ。再開発計画を巡っては、反対する声も根強いが、容積率移転による事業計画は自治体の新たな試みとして注目を集めている。

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