短プラ17年半ぶり引上げ!
2024.08.08
日銀による追加利上げで、家計が銀行と取引する際の住宅ローン金利や預金金利も変わる。家計全体でみれば、恵方の方が大きいとの試算が出ている。三菱UFJ銀行は31日、住宅ローン金利(変動型)の指標となる短期プライムレート(短プラ)を年1.475%から1.625%に引き上げると発表した。普通預金の金利も年0.02%から0.10%に上げる。
大手銀行は、日銀が3月にマイナス金利政策を解除した後も短プラを据え置いていた。三菱UFJ銀行による短プラの引き上げは17年半ぶりで、9月2日から適用する。三井住友銀行やみずほ銀行も短プラの引き上げを検討している。短プラの上昇により、住宅ローンを借りている家計にとっては負担が増す可能性がある。とりわけ全体の約7割を占めるとされる変動型に与える影響が大きい。一般的に変動型の金利は最も優良な企業に銀行が1年未満の短期で融資する際の指標となる短プラを使って決める。短プラに基づいて基準金利(店頭表示金利)を定め、基準金利からどれほど優遇するかで適用する金利を決めている。住宅ローンの基準金利を見直す時期は銀行によって異なるが、実際の返済額に反映されるまでには一定の時間差がある。一般的に金融機関は、利用者の返済額が金利上昇で急増しないよう激変緩和措置を設けている場合も少なくない。
長期金利が上昇していることから、みずほ銀行をのぞく大手銀行は31日、10年固定型の住宅ローン金利を8月から引き上げるとも発表した。追加利上げを受けて三菱UFJ、三井住友、みずほ、三井住友信託の各銀行は8月から9月にかけ普通預金の金利を現在の5倍にあたる0.10%に引き上げると発表した。定期預金についても引き上げを検討しており、具体的な上げ幅を詰めている。りそな銀行やソニー銀行、横浜銀行といったネット銀・地銀も預金金利の引き上げを検討する。
住宅ローンの負担は重くなるが、家計全体ではプラスの影響が上回りそうだ。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算では、今回の利上げによって住宅ローンを抱えない世帯も含めた家計平均で住宅ローンの利払い負担の上昇が年間1.6万円程度を見込む半面、普通預金の利子収入が0.4万円、定期預金の利子収入が2.3万円それぞれ増える。差し引きで1.1万円の収支プラスだ。株式や投資、国債の配当増も含めると2.5万円のプラスにまで膨らむ。利上げは公的年金財政にも一定の影響を及ぼす。公的年金の運用を担う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、国民が払った公的年金保険料の一部を将来の給付に備えて運用している。資産は株式と債券を半分ずつの割合で構成する。金利が上がることで債券価格が下落すれば、足元で保有している債権の評価は下がるものの、長期的に見れば収益が高まることが期待できる。