変動金利の上昇はいつから
2024.03.25
借りている変動金利型住宅ローンの金利が上がるのはいつだろうか。マイナス金利解除を受け、優遇幅の縮小で適用金利が上がるケースが出てくる可能性はある。既に借りている人の優遇幅は当初の水準が維持される原則だ。今借りている人にとって重要なのは短プラ(短期プライムレート)がどうなるかだが、三菱UFJ銀行が変えないと発表した。みずほ銀行の頭取も、マイナス金利解除決定前に全国銀行協会会長としての記者会見で「必ずしも短プラが上がるということではない」と説明していた。メガ銀行が短プラ据え置きなら、多くの地方銀行も追随するのではないだろうか。もともと2016年のマイナス金利導入時に短プラ(最も多くの銀行が採用している最頻値「日銀調べ」)は下がらなかったため、マイナス金利解除で上げるのは理解を得にくいと銀行が判断しても不思議はない。ただ、ネット銀行など一部には短プラ連動でない方式で基準金利を決める事例もあり、金利が上がるかもしれない点に要注意だ。
今回金利が上がらない人も、いつまでも据え置かれるとは限らない。短プラが最後に下がったのは09年。日銀が無担保コール翌日物金利(翌日物金利)の誘導水準を0~0.1%程度にしたが、09年の経緯を踏まえると、誘導水準が0.1%を超えると短プラ上げの可能性が出てきそうだ。日銀は次の利上げで翌日物金利を0.25%に上げると見られており、その際に短プラ引き上げが広がるシナリオに注意が必要になる。
追加利上げはいつなのか。日銀は物価の基調がより強まるかを見極める姿勢だ。高めの賃上げが幅広いサービス価格にしっかり転嫁され、それが再び賃上げにつながるという好循環が広がるかを、主に物価見通しの更新がある金融政策決定会合(年内は4,7,10の各月に開催)で点検していきそうだ。
7月や10月に追加利上げが決まった場合、変動型ローンの適用金利に影響が出るのはいつか。変動型ローンは普通半年ごとに適用金利を見直す。4月1日と10月1日時点で基準金利をもとに適用金利を決め、前者は7月、後者は翌年1月を適用時期とする場合が多いようだ。7月30日~31日の会合で利上げ決定なら、同年7月から適用となりそうだ。いずれにせよ影響が出るのは25年に入ってからだ。
そして、金利上昇と毎月の返済額増額は同じではない。元金と利息を合わせた毎月の返済額をおなじにする元利均等方式では、返済額の見直しを5年ごとにして急増を防ぐルールを採用する金融機関も多いからだ。もっとも、金利が上がれば返済額に占める利払いの比率が増え、元金が減るペースが落ちかねないなど注意点もある。日銀が利上げを決めても、適用金利がすぐに上がったり、早期に返済負担が増したりするとは限らない。とはいえ「金利ある世界」への備えが徐々に必要になることも忘れないでほしい。