出生数最少75.8万人
2024.03.02
厚生労働省が27日発表した2023年の出生数(外国人含む速報値)は75万8631人で、前年から5.1%減少した。減少ペースは想定より速く、この傾向が続くと35年にも50万人を割る。結婚適齢期の人口が急激に減少する「2030年の崖」を超えると、出生数の反転は難しくなる。
人口動態統計によると、出生数は8年連続減少し、過去最少を更新した。新型コロナウイルス禍では若者の間で結婚や妊娠を控える動きが広がった。社会活動が平時に戻るにつれて解消するとの見方もあったが、その期待が現実していない。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は出生数が24年以降にある程度打ち直す道筋を描く。だが上向く兆しは見えない。23年の婚姻数の速報値は前年比5.9%減の48万9281組で、90年ぶりに50万組を割った。岸田文雄首相は「2030年代に入るまでが少子化トレンドを脱却するラストチャンス」と語る。00年代はまだ年120万人ほどの出生があった。この世代が結婚適齢期を迎えている30年ごろまでの変化が不可欠だ。
民間有識者らによる「人口戦略会議」は1月、経済を成長させながら2100年時点で人口8000万人規模を維持するための提言を公表した。足元で1.26の出生率を40年ごろに1.6まで回復させる必要があると訴える。対策を打たなければ50~100年の実質経済成長率は年平均でマイナス1.1%となる。
まずは婚姻数を回復する環境が重要になる。22年の総務省調査では職に就いている30代男性の未婚率は年収200万円台で64.7%と12年から11.8ポイント上昇した。結婚を希望する人は男女とも8割程度を維持する。若年層の不安定な雇用や所得環境の改善は不可欠だ。若年層で不本意に非正規で働いている人の正社員への転換も重要だ。男性の育児休業取得率は22年度に17.1%にとどまっており、育児や家事への参加を促すことも欠かせない。若年層の雇用環境への対応も急務だ。人が減っても成長力を保つ改革も必要になる。