住宅ローン金利、頭金積めば低く!
2024.01.21
頭金を一定額以上にすると貸出金利を引き下げるタイプの住宅ローンが増えている。住信SBIネット銀行は住宅価格の2割以上を頭金として払うと、全額借り入れた場合より金利を引き下げる仕組みを始めた。住宅ローンの競争が厳しさを増すなか、一律の金利引き下げ競争が限界に近づき、信用力の高い優良顧客の囲い込みを進める。
頭金によって住宅ローンの金利水準を変動させる仕組みは大手銀行は導入しておらず、「フラット35」などを除けば珍しい。超低金利が続いたことで頭金なしでも借りられる住宅ローンが普及していたためだ。三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査では、30代の4割が頭金ゼロで住宅を購入したと回答した。足元でネット銀を中心に頭金ありで優遇する制度の導入が相次ぐ背景には、住宅ローン融資競争の一段の激化がある。
住宅金融支援機構によると、22年度の国内銀行による住宅ローン新規貸出額は15兆4360億円。2000年代以降で市場規模は大きく変化していないが、安定した需要が見込める。そうした中でネット銀など新興銀行参入で貸し手が多様化したため、住宅ローンの融資競争は足元でむしろ過熱している。
日銀が24年にもマイナス金利を解除するとの観測があり国内金利は上昇が見込まれる。今後は預金獲得のためのコストが増えるとみられるが、ネット銀などは簡単に貸出金利を上げられない状況にある。
住宅ローン実行額がメガバンクを超える住信SBIネット銀行は23年11月、変動金利での新規借入時に頭金が住宅価格の2割以上の場合に金利を引き下げる制度を導入した。足元の金利水準では、頭金2割未満の時に比べて0.022%引き下げて0.298%とする。逆に手数料なども含めて物件価格より多い金額を借り入れる「オーバーローン」の場合、0.024%高くなる。
PayPay銀行も23年10月から、頭金1割以上と1割未満で金利水準を分けた。足元では、頭金1割以上の場合、0.04%低くなる。イオン銀行も23年に頭金次第で金利水準を変える制度を導入した。メガバンクの変動金利の最優遇金利は0.3~0.4%台だ。
頭金による金利優遇以外で顧客を取り込もうとする動きもある。SBI新生銀行は1億円以上の借り入れで金利を0.19%まで下げるキャンペーンを始めた。通常の0.42%と大きな差を設けた。資金が潤沢で資産価値の高い物件を購入する消費者を重点的に囲い込む狙いだ。ネット銀行などにとって住宅ローンは集めた預金の優良な融資先で、国内金利が本格的に上昇し始めても、条件付きで優遇幅を設ける施策は残すとみられる。