中国住宅販売2年連続減へ
2023.12.17
中国景気が底ばいの状態から抜け出せていない。中国国家統計局が15日発表した11月の主な経済統計によると、消費動向を映す小売売上高は季節要因をならした前月比で減少に転じた。家計の行先き不安は根強く、2023年の新築住宅販売面積は初めて2年連続の減少となる見通しだ。
11月の小売売上高は前月を0.06%下回り、4カ月ぶりのマイナスとなった。中国政府の統計は前年との比較をメインに位置づけることが多い。前年同月比で見た小売売上高は10.1%増となり、伸びは10月から拡大した。こうしたデータから、国家統計局の劉愛華報道官は「景気は景気は引き続き回復している」と強調した。だが、これには特殊要因がある。22年11月は厳しい移動制限を伴う「ゼロコロナ」政策が続いていた時期だ。小売売上高は21年同月から5.9%減少するなど経済指標が悪化していた。同月比較での伸びは前年の反動によるところが大きい。実態は家計の消費マインドが冷え込んだままで個人消費の回復力は鈍い。国家統計局が公表する消費者心理を示す指数は22年から低迷が続く。雇用や所得への行先懸念から財布のひもは固い。
11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.5%下落した。中国の食卓に欠かせない豚肉価格が下がったことが主因だが、天候や国際相場の影響を受けやすい食品とエネルギーを除いても上昇率は0.6%にとどまり、デフレリスクがくすぶる。
家計は大型消費にはさらに慎重だ。1~11月の新築住宅販売面積は前年同期比7.3%減少した。1月からの累計でマイナス幅の拡大が続いており、通年では統計が遡れる00年以降で初めて2年連続の減少となる公算が大きい。
販売不振の長期化でマンション価格は下落が続く。主要70都市平均の新築価格は11月まで6カ月連続で前月を下回った。「住宅価格は上がる」との期待が崩れ、一段の値下がりを待つ買い手も多い。中古住宅では売出物件が積み上がり、11月は浙江省杭州市が横ばいだった以外は69都市で値下がりした。景気の停滞感には地域格差もみられる。1~11月の工場建設など固定資産投資は前年同期比2.9%増だったが、地域別にみると経済規模が比較的大きい沿岸地域など東部だけがプラスだった。
経済が安定成長の軌道に戻るかどうかのカギを握るのは民間企業の動向だ。10月末時点で民間製造業などの24%が赤字に陥った。過去の同時期と比べると、赤字比率はゼロコロナ政策下の22年10月末を上回り、最大を更新した。
中国の就業者の8割は民間企業で働いているため雇用や待遇改善のもたつきを通じて不安心理は家計にも広がりやすい。政府は不動産など民間経済への金融支援強化を急ぐ。銀行に対して、年間目標を設定して融資全体に占める民間企業向けの比率を高めるよう指示した。企業の資金繰りを改善させて投資や雇用の拡大を促す狙いだが、目標ありきの融資拡大は金融不安をたきつけるリスクもはらむ。